日本栄養療法推進協議会 設立披露懇親会開催


 平成16年12月12日(日)、午後3時より東京都内のパレスホテルにて当協議会の設立披露懇親会を開催いたしました。お陰様で当日は医療関係者、関連団体および企業、マスコミなど日本全国から合計100名以上の皆様にお集まりいただき、盛会のうちに会を終了することができました。多数のご参加、心より御礼申し上げます。
 なお、設立披露懇親会の主な内容は以下の通りです。
ご挨拶

日野原重明理事長(ビデオメッセージ)

 本日はやむを得ぬ事情により設立披露懇親会に出席できぬ非礼を、深くお詫び申し上げます。
 当協議会は、これまで立ち遅れがちであった日本の栄養療法を向上させつつ、様々な職種の医療関係者や関連団体、あるいは関連企業の参画のもと、適正な栄養療法の普及を目指すべく発足したものであります。
 日本の医学は戦後急速に発達しましたが、反面、医学教育において栄養学の進歩は立ち遅れがちであり、教育カリキュラムの中での栄養関連の研究、学習も十分とはいえませんでした。しかし、栄養は健康の維持・増進や病気の回復の点で基礎となるものであり、医療関係の各職種あるいは関連企業等に正しく理解された上で、トータル的な栄養管理が行われる必要があります。
 今日、臨床栄養の領域においても、適正な栄養管理を考える際には科学的な見地から導き出されたエビデンスの提示が求められるようになってきています。当協議会は、研究、教育、臨床のいずれの観点についても各方面でともに考え、検討し、最適な栄養療法の確立を目指すべく設立されたものであります。現在、様々な学会や研究会等の団体が存在していますが、これほど多方面の専門家や企業が一堂に会して栄養療法の普及に取り組むということは非常に素晴らしいことだと考えております。本日お集まりいただいた皆様には、ぜひ各方面の代表者として忌憚のないご意見を頂戴し、各専門領域における知識や経験を一つにまとめあげることで、わが国の栄養療法の発展に寄与していきたいと存じます。
 私は現在93歳であり、周囲から長寿と言われることも多いのですが、長寿のための栄養の摂り方や選択すべき食品など、いわゆる「長寿時代の栄養」に関する研究もまだまだ十分とは言えません。こうしたことも含めて、幅広い研究と実践が行われることを心から期待しております。私もできる限り健康に留意しながら本協議会の活動に参加していく所存ですので、ぜひ皆様方にもご協力をお願い申し上げます。


大柳治正副理事長

 これまで私は外科医として、あるいは日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)の理事長として、主に急性期の患者様に対する適切な栄養管理の普及を積極的に推進してまいりました。先進国と言われる国々でさえも、入院患者様の約3〜4割は何らかの栄養障害があり、そのうち約1割は高度な栄養障害のため治療に難渋することが明らかになっております。したがって、創傷治癒や免疫能の促進のために栄養療法あるいは臨床栄養学を学ぶことは極めて重要です。また、臨床における栄養管理の手法としてNSTによるチーム医療は非常に有用な方法であることが明らかになり、今後より一層の普及が望まれております。
 私がこれまでに関わってきたNST普及のための具体的な取り組みの一つとして、JSPEN におけるNSTの認定制度があります。ただ、実際に認定作業を進めていく中で、より客観的で精度の高い評価を全国規模で行っていくためには第三者的な機関が必要であるとの結論に至りました。そこで、関連団体の協力のもと本協議会(日本栄養療法推進協議会:JCNT)設立の機運が高まってまいりました。
 しかし、栄養管理を必要とするのは急性期の患者だけに限らず、チーム医療を展開する上でも糖尿病や栄養過多といった慢性期の患者を視野に入れる必要がございます。そこで、慢性期患者に対する栄養管理、チームアプローチに積極的に取り組んでおられる日本病態栄養学会にも協力を呼びかけ、同学会の清野裕理事長と話し合った結果、本協議会の趣旨にご賛同いただくことができました。本日、清野先生は海外出張のため出席しておられませんが、新たに日野原重明先生に理事長への就任をご快諾賜り、清野先生と私が副理事長として日野原理事長をしっかりとサポートしていくこととなりました。
 今後は相談役の岩ア榮先生や顧問の先生方、当協議会設立の功労者である東口高志先生をはじめとする理事の皆様、その他関係各位、あるいは医療に携わる多くの職種の皆様のご意見を頂戴しながら、JCNTの活動を大いに盛り上げていきたいと存じます。


清野裕副理事長

※清野裕副理事長のご挨拶につきましては、設立披露懇親会欠席のため、現在、改めて執筆を依頼しております。近日中に当ページに掲載の予定ですので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。


東口高志理事

 まず本日お集まりの皆様に対し、医療人の一人として感謝の意を表したいと存じます。
 1998年に鈴鹿中央総合病院でNSTを設立した当時を振り返ると、まさに毎日が苦闘の連続であり、NSTという言葉すら認知されておらず、今日こうして大勢の方々にご賛同いただけるとは予想だにしておりませんでした。
 これまでNST普及に向けて、7〜8年の間に350以上の施設あるいは地域で講演等を行ってまいりましたが、その甲斐あって、現在では約290施設においてNSTが稼動中であり、稼動の準備を進めている施設は220施設以上ございます。私自身も鈴鹿中央総合病院、尾鷲総合病院、藤田保健衛生大学七栗サナトリウムの3施設においてNST設立に携わってきましたが、そこには常に様々な職種の皆さんが「栄養」というキーワードのもとに一致団結した、強固な協力体制と弛まぬ努力がございました。そうした中、このたび第三者機関として当協議会が設立されたことは、一人の医療人として心から感謝している次第です。
 自分たちの行ってきたことを適正に評価してほしいというのは、誰もが共通して胸に抱いていることではないでしょうか。それを第三者の立場から評価してもらえるということは、心の支えであり、次の活動のための原動力と言えるのではないかと思います。
 大柳副理事長も私も、当協議会設立に至るまでに身を削るような努力を積み重ねてきました。その過程において、日野原重明先生と岩ア榮先生に当協議会の設立趣旨をご説明した際、お二人とも目を輝かせながら本当に純真な気持ちで趣旨に賛同いただき、理事長および相談役への就任をご快諾くださった、その時の喜びは言葉で表せないほどのものであり、感謝の気持ちで一杯でございます。
 本日お集まりいただいた皆様方にも心から感謝申し上げますとともに、今後も医療関係者や関連団体、あるいは関連企業等多くの皆様のご協力のもと、日本の栄養療法の確立を目指して努力していきたいと存じます。


祝辞

平澤博之先生(日本外科代謝栄養学会 理事長)

 先日、米国の学会に参加した折、「最良の抗生物質は栄養である」と書かれたスライドを目にする機会がありました。また、栄養領域における私の恩師、小越章平先生にはかつて「万病に効く薬はないが、栄養は万病に効く」という話をしていただき、今でも鮮烈に印象に残っております。どちらの言葉も栄養療法の重要さを端的に表しているのではないかと思っている次第です。今後、日本栄養療法推進協議会の活動を通じて全国の医療機関でNSTが設立され、すべての病める人々が最適な栄養療法を受けられるようになることを心から願って止みません。また、日本外科代謝栄養学会としても積極的に本協議会の活動に参加する所存です。


関口久紀先生(社団法人 日本病院薬剤師会 専務理事)

 現在、日本病院薬剤師会の中には、数十名の薬剤師が日本静脈経腸栄養学会認定のNST専門療法士の資格を取得して活躍しております。今後は、日本栄養療法推進協議会の認定を多くの病院薬剤師が受けられるよう、日本病院薬剤師会としても頑張って取り組んでいきたいと存じます。
 NSTには非常に重要な業務が多々ございますが、特に病院薬剤師の場合には輸液療法等の分野で能力を発揮できると考えております。その意味で、一人でも多くの認定薬剤師を育成していくことを通じて、日本栄養療法推進協議会の発展に貢献できれば幸いです。


廣瀬千也子先生(社団法人 日本看護協会 常任理事)

 日本栄養療法推進協議会の設立に際しましては、日本看護協会会長の南裕子が顧問として、また専務理事の岡谷恵子が理事として拝命を頂いております。本日は、代理として祝辞を述べさせていただきます。
 日本看護協会は、1994年にスペシャリスト・ナースの育成コースと認定資格制度を発足し、現在、専門看護師98人、認定看護師1239人(9領域)が全国の医療施設、地域で活躍しております。今回設立のNSTに関連する認定看護分野には、WOC看護、感染管理、糖尿病看護、摂食・嚥下障害看護、重症集中ケア等があります。
 食事に関するケアは、今後ますます重要/不可欠な分野として各専門職者が協働し、その質の向上に貢献していくことは、新しい時代の流れであると実感しております。看護職能団体日本看護協会は他団体、他職種との連携パイプを一層太くして協力していきたいと考えております。


中村丁次先生(社団法人 日本栄養士会 会長)

 私は30年来「臨床栄養」をテーマに仕事をしてまいりましたが、本分野が現在のような発展を遂げたことに心底驚いております。
 既にご存知の通り、2000年に栄養士法が改正となり、栄養士と管理栄養士の役割分担が明確になりました。これにより管理栄養士は病棟での業務を中心とする職種として位置づけられつつあります。この考え方は教育カリキュラムにも色濃く現れており、2年後には全く新しい管理栄養士が生まれるはずでございます。本日お集まりの皆様にも、そういった目で暖かく見守りつつ、育てていただければ幸いに存じます。


小崎繁昭先生(社団法人 日本臨床衛生検査技師会 会長)

 従来、臨床検査技師、衛生検査技師は病院の中でもどちらかというと目立たない存在だったように思います。しかし、近年に至ってチーム医療が注目され、様々な専門職種がそれぞれの立場から良質な医療を提供しようという機運が高まってまいりました。その中で、臨床検査技師、衛生検査技師もチームの一員として積極的に活動するようになりつつあります。
 かつて私がNSTという新しいチーム医療の存在を知った時、真っ先に日本臨床衛生検査技師会としてNST活動の推進に協力できればと考えました。その背景には、例えば栄養状態の指標として用いられるアルブミンやプレアルブミン等の測定は臨床検査技師、衛生検査技師の専門領域であり、提言していくべき事項も数多くあると考えたからでございます。
 日本栄養療法推進協議会の設立を機に、日本臨床衛生検査技師会としても全国の臨床検査技師、衛生検査技師に協力を呼びかけ、より正確で精密なデータを提供することにより患者様の治療に大いに貢献していきたいと存じます。


山口義行先生(立教大学 経済学部教授)

 医療費の高騰が取りざたされている昨今、NSTは単に治療の一手段ではなく、医療の質を落とさずにこの経済問題を解決するための「現場サイドからの答え」であると認識しております。
 私はこれまで自著やマスメディア等を通じてNSTの重要性を説いてまいりました。その影響もあってか、近日NHKのテレビ番組でも尾鷲総合病院におけるNSTの取り組みが取り上げられることとなりました。このことから見ても、今や医療界に留まらず、社会全体がNSTに注目し期待し始めたことがお分かりになるかと存じます。
 今後の栄養療法の推進について考える時、医療に直接携わっていない人々の支援も大いに必要になってくることでしょう。その意味で、経済学者あるいは社会学者の視点から、日本栄養療法推進協議会の発展のために尽力したいと考えております。


入山圭二先生(桑名市民病院 院長)

 1960年代まで、患者様が術後に合併症等を来たした場合には、絶食期間中に衰弱死するケースも決して珍しくありませんでした。しかし、1970年代に経静脈栄養法がわが国に導入されて以来、状況は劇的に好転し、それまで助からなかった患者様の命を救えるようになりました。この時から、私は栄養状態を正常な状態に保つことの重要さを痛感し、主に外科栄養学の観点から本領域の発展に力を注いでまいりました。そして、その過程において大学の後輩である東口志先生と出会うことができたのは非常に幸運だったと思っております。今回、日本栄養療法推進協議会の設立にあたって東口先生に大いに貢献していただいたことは、大学の先輩としての誇りでもあります。
 栄養療法に限らず、全ての医療行為は本来チームで行うべきものであると、私は考えております。そうしたチームアプローチの観点も含めて、患者様の栄養状態の維持という医療の最も基本的な側面について、日本栄養療法推進協議会が第三者的に評価するのは非常に重要なことだと思います。現在、私は日本静脈経腸栄養学会のNST療法士認定制度を統括する立場にありますが、今後は随時その認定業務を日本栄養療法推進協議会に委譲していく所存です。本日お集まりの皆様とともに、協議会の発展のために尽力していきたいと存じます。